· 

若手生産者が継続的に活躍できるように①


11月からジョイファーム小田原のホームページ内で生産者の募集をはじめました!

既存の農家の加入も募集していますが、新たに農業をはじめる方も、将来ジョイファーム小田原と一緒に農業を頑張ってもらえたら嬉しいです♪

 

【生産者募集ページはこちら】

https://www.joyfarm-odawara.com/farmer/

【新規就農の情報ページはこちら】

https://www.joyfarm-odawara.com/farmer/new-farming/

 

最近では新たに農業研修を無事終え、新規就農者となったタイミングでジョイファーム小田原に加入してくれている若手生産者が増えており、全国的な後継者不足な中、大変頼もしく感じています。

 

若手の農家さんに増えて欲しい!一緒に頑張りたい!と思う一方、情報ページを作るにあたって情報収集を行なった際に新規参入者のうち、75.5%の生産者が農業所得で生計が成り立っていないという、驚くべきデータを目にしました。

これは総務省のまとめた「農業労働力の確保に関する行政評価・監視 -新規就農の促進対策を中心として-」*1の資料からの数字です。

総務省の調べでは、就農してからおおむね 10年以内の新規参入者のうち、生計の状況について回答のあった 2,265 人について示した数字であり、計画的に農業をすすめなければ経営が破綻してしまうという現実が垣間見えます。

 

第一線で農家として活躍をしている先輩達は若手が陥りやすい「経営困難」についてどのように感じているのでしょうか。

 

親元就農をして20年、現在は梅栽培が盛んな下曽我で支部長をしている、磯崎由広さんにお話を聞きました。由広さんは最近、お父様から代替わりをしてすももの栽培に力を注いでいます。昨年からはジョイファーム小田原に出してくれることになりました。

 

就農をする前はサラリーマンを経験し、常に家業を継ぐことを意識していたと言います。

サラリーマンから農家へ転職

サラリーマンは14年ほどやっていたんだけど、なんていうんだろ…。サラリーマンって独特な人間関係があるじゃん。それと体力があるうちに始めないと、とか色々考えたら早いうちに農家へ転職した方がいいって思うようになったんだ。

うちは親元就農だったから1年目から色々親父に教えてもらうことができて恵まれてたね。

 

サラリーマン時代にはパソコンを使ったり、会計にも携わる機会があったから、うちは今奥さんが会計をやってくれてるけれど、はじめから農業特有の会計に躓いたとかはなかったかな。

 

当時も補助金や助成金の情報はあったけど、自分は使わずに就農したよ。

なかなか申請の書類っていうのは農業研修生以外、見る機会がないと思うけど、提出する書類がとにかく多いよね!他に収入が全くないって場合なら少しはもらうことも考えたかもしれないけど。

他にやることがたくさんある場合は優先できないかなと思ったし、金額も大きいようで、手間や時間の方がかかると思うと申請するのもどうかなと思ったから。

 

就農後のギャップみたいなものは特になかったかな。休みがないけど、もともとそういうものだと思っていたからね。

「年間で」何を作るかが大切

就農時に栽培していたのは米、みかん、梅、ハウスいちご、すももで、それは今も変わっていないんだ。自分が就農してから新しく追加した品目はないけれど、比較的新しい品目といえば、一時期梅が気候のせいかとれない時期があったから35年前くらいにすももを始めたり、キウイは約40年前にはじめたかな。

逆に栽培をやめたものといえば夏場のトマト。すごくたくさん収穫できたんだ。それだけ聞くとなんでトマト栽培をやめたのかって思うでしょ?

 

野菜は単価が安いわりに短期間でどれくらい収穫できるかが勝負だから、うちは家族経営だし、もぎ手も慢性的に足らないと感じていたんだ。

 

そうなるとアルバイトが欲しいと考えはじめちゃうけど、今ってどんどん人件費が高くなってるじゃん。時給が1,000円超えちゃったから、簡単には雇えないことを考慮すると、結局大規模にやろうと思っても自分がなんとかできる範囲の品目を!って思って栽培する品目を見直したんだよね。

 

新しく始めた品目がないから、うちの親父が耕作してた面積からはあまり広がってなくて、あとは多少人から借りて欲しいって言われた梅畑を引き受けたくらいかな。

新規就農者に言いたいのは耕作をしはじめてもすぐにはまともな収入がないことを想定しないといけない。実がならなければ(青果物がなければ)収入がないし、早いうちに「年間で(青果物が)取れる」1年の収入の流れをつくらないといけないということだね。

 

どの農家でも同じことを言うと思うけど農家の収入は=収穫期なんだよ。例えばうちの場合はすももがなければ夏の間の収入が0になってしまう。個人でやろうと思った場合、空いた時期に自分でどんどん耕作しようと思ったら何をつくればいいか必然的に絞られてくるよね。

 

あと、うちみたいに複数作るメリットは他にもあって例えば「うちはみかんだけでやっていく!」ってなった場合に、もしみかんで病気が流行したら…うちなんかもイチゴをやっているけど今年は病気が出たことでイチゴは赤字!でも他の作物で黒字が出ているから全体では赤字にはならないんだよね。

収支でマイナスが出たら他の利益が出た作物で補うしかなくなるから、保険のつもりで他の作物も耕作を検討しておくといいよ。

若手農家の暮らしを安定させるには

「独立農家は年収1000万円を目指せ!」を実現するには!?1000万円!!!!?(笑)まず難しいと思うけどな~、う~ん。

でも、そこまでしなくても、まずは1つの目安として大学生の初任給は?って考えたときに300万円手取りとしてあると安心して若手が生活できるよね。300万円手取りってなると当然少なくとも400万円以上は稼がないと資材費はでないから目標としては甘い数字ではないと思うよ。

 

そこで耕作する作物の単価って重要だよね。果樹だと1本あたりどのくらい実がなるかってだいたい調べれば分かるから、単価と面積あたりの収量を計算した上でかかった経費を引くとその作物でどのくらい利益が上がっているかが計算できる。

収入1000万円をみかんで目指すなら9000坪以上かな~、もちろん経費はそこから引くってなるからもっともっと広くやらなきゃいけないよね。

 

小田原で特に栽培されているみかん、梅、キウイだけだと既にみんな耕作してる作物だし、単価が上がるのは現実的にかなり厳しいと思うから、何か夏場にも収穫できる作物が2~3種類は欲しいよね。

 

1000万円っていうとテレビとかで放送してるような成功事例みたいな感じで俺は「そんなに農業で簡単に稼げない」と思っちゃけど、補助金・助成金がなくなった独立5年目段階だと経験もあるわけだから力量にもよるけど全然不可能な話じゃないと思うよ。

ただし仕事量はサラリーマンより大変だと思うけどね…

 

成功する秘訣は研修期間中の人脈を活用することだね!研修先の先輩とか、あと土地契約で耕作放棄地を借りるときとかに廃業する農家さんの情報とか聞いたり、今は高齢化で廃業する農家のほうが多いからね!人とのつながりでもらえるものはもらおう。

 

でも!厳しいことを言うようだけど、農業は自分のやる気が一番重要で、就農してから2~3年で辞めるようなつもりなら研修をしないほうがいいと思うよ。

昔は農家といえば家業をついで親元就農をするのが当たり前でしたが、現代では親が農家をしていないいわばゼロから独立農家を目指す若手が増えてきたといいます。

 

親元就農ではないからこそ、経営に迷いが生じたときにアドバイスをもらえないと行き詰まるので、半年ごとや1年ごとかで目標をたてて、足らないと感じたところは自分で補っていかないと、と語る由広さん。

 

新たに加わった仲間が挫折しないように見守りつつ、それぞれの経営スタイルが早く確立できるようにジョイファーム小田原は新規就農者を応援しています。

 

*1「農業労働力の確保に関する行政評価・監視(総務省)

https://www.soumu.go.jp/main_content/000607884.pdf