渡辺 拓登(わたなべ たくと)
地元に根づいた、「あの人なら!」といわれる農業を目指す!
自分の人生の転機となったのは、2011年の東日本大震災だと思います。あのとき「当たり前のことが当たり前でなくなった…」、「多くのことがくつがえった…」と感じたんです。そして放射能汚染のこともあり、健康や食べ物について興味がわいてきて、いろいろ調べたんです。そうすると「日本が世界で一番農薬が使われている国である」とか、なんだか考えさせられることがいっぱいあって、「自分は何も知らなかったな~」って思いました。そこから「食べるものは自分で作りたい!」という思いが強くなった気がします。これが農家になりたいと思った直接の動機ですね。その後、実際に農業に携わってみると「あ!自分は木が大好きだったんだ!」と気づきました。
普通のサラリーマンだった自分が「農業をやりたい…」と思って、まず訪れたのはその時住んでいた藤沢市の農政課でした。そこで研修・新規就農を助けてくれる、神奈川県青年就農サポートというのがあることを知りました。研修先の候補はいくつかありましたが、長谷川農園だけはお給料をもらいながら研修ができるというのでお世話になることにしました。小田原は、当時住んでいた辻堂から近いというのも、研修をここに決めた一因ですね。
ちょうど同時期に3名の研修生がいたのも、大いに励みになりました。この3名とは“音楽”が趣味っていう共通点もあり、研修中は楽しかったですね。でも研修の1年目は長谷川農園の代表とぶつかることがよくありました。今思うと「農業の大先輩を捕まえて、生意気なことを言ってたな」と思うんですけど、その当時は素直に受け入れられなかったんですね。でもそんな自分を受け止めてくれて、代表は「あきらめずに頑張れ!」と励ましてくれました。2年目からは「自分の考えが甘かった!」と気づき始め、いろいろなことが受け入れられるようになりました。何事も自分の考え方次第ですね。
就農して少し経った2年前、上曽我の築108年という古民家に引っ越してきました。引っ越してきた当初から、ご近所の方がちょくちょくBBQとかに呼んでくれて、地域の人たちには本当に良くしてもらっています。この地域はまだ変わっていく余地があるし、オープンな人もたくさんいるので、つながりを作りやすいと思います。実は最近、市民団体の「曽我さいこう村」っていうのを立ち上げたんです。仲間が15名ほどで、今の活動は耕作放棄地を地主さんから借りて、キャンプ場に変える作業です。団体としては環境保全をめざしているんですけど、その他にもBBQをしたりとか、地元の人が集まれる場所が提供できたらいいなと思っています。ゆくゆくは援農に来た人が交流したり、宿泊したりできる場所になったらいいなとも思っています。援農での作業時間は短いし、十分な交流ができないままバイバイっていうケースがほとんどですからね。
農家として独立してから今年で3年目になりますが、大変なことは「自由なところ」ですね。え!独立して自由になったのに大変なの?と思うかもしれませんが、自分で全てできて、そして全て判断できるっていうのが意外に難しいんです。自分は気が多くて、一年目はいろいろなものに手を出し過ぎてしまったと思っています。焼き鳥屋“やきとり松”を始めたのが良い例ですが、目先の現金収入を得るために「やれる!…」と思ったんですけど、結局そのせいで農業を軸に回らなくなっちゃったんです。だから今年からは“やきとり松”の営業を週3日に縮小して、農業に中心をおき、軸をぶらさずにやっていくことにしました。3年目にして、やっと質を上げていくために捨てるべきものが分かってきた…っていうところですかね。
農業を本格的にやっていくのに自分が選んだ屋号は「のうてん農園なんでも研究所」。自分で言うのも変だけど、目立つことが好きだし、オリジナリティーがある事がしたいと思ってこの名前にしたんです。おもしろいことは何でも取り入れていける可能性を秘めている名前でしょ!! とはいえ、当面の目標は認定農業者になること(年収500万円以上)ですね。まずは農業で生活の基盤を築いて、それから加工品製造など他のやりたいことに手を伸ばしていこうと思います。「あの人なら!」と自分を信じてもらえる農業を目指したいです。
新規就農者へのアドバイス!
新規就農を考えている人は「まず、やきとり松へきてください!」。
ちょっと宣伝ぽくなっちゃうけど、冗談ぬきでお勧めです。
“やきとり松”は自分が経営しているんだけど、
結構地元の新規就農者がやってくるので、個人的にアプローチして
頼ってみてもいいんじゃないかな。
住所:神奈川県小田原市曽我原180-1 (JR御殿場線下曽我駅から徒歩5分)
電話番号:0465-42-1972 営業日:金・土・日(17時~21時) 地図: 食べログ