今年も2月には見渡す限り白い花でおおわれた曽我梅林。かぐわしい梅の花が終わった後には、青々した梅の実が結実するのを待つばかりだったのですが。。。 なんと今年は梅酒やシロップ漬けに使われる青梅、白加賀の生育が思わしくありません。生産者さんにお話を伺うと、3月下旬にこの地域を襲った寒波が原因のようです。2月にはあんなに見事に花を咲かせていたのになぜ、白加賀だけ?これには品種による受粉時期の違いが影響するようです。
梅は本来、気候が温暖で湿度が保たれているような地域で良く育つ果樹だそうです。原産地は中国の山岳地帯で、それが寒さに強いアンズと自然交雑して奈良時代に日本へ伝わったといわれています。しかし一般の家庭に広まり、梅干が食卓にのぼるようになったのは江戸時代だといわれています。
同じように見える白い梅の花ですが、よく見ると花の形や色が違い、そこからできる梅の実の種類は100種類以上あるのだそうです。そして開花や受粉の時期も少しずつ違います。早咲きの代表的な品種の小梅は2月に開花、その後に南高や十郎が続きます。そして晩(おそ)咲きの品種の白加賀の開花は3月に入ってから。開花の時期の違いのほかにも、梅の品種によって花粉量が多かったり少なかったりという違いがあるのだそうです。さらに花粉があって自家結実する品種(小梅)、花粉はあるけど自分の花粉で結実しない(自家不結実)の品種(十郎・南高)といった違いもあります。
梅の栽培で大きな問題となるのは結実の不安定さだといわれています。梅はまだ寒い時期に花が咲くので、受粉を助けてくれる放花昆虫の数も限られています。ですから受粉の時期の天候は、梅の作柄を大きく左右し、生産者さんが気をもむところだそうです。
今年は1月、2月と暖かく天候に恵まれたので、早咲き品種の小梅、そして3月上旬に開花する十郎・南高梅の作柄は例年並みなのですが、3月中旬以降の寒波で放花昆虫(主にみつばち)の活動が鈍く、白加賀の受粉に影響がでてしまいました。そして白加賀がもともと花粉の少ない品種だということも不作の原因だと考えられます。これが自然と共に歩む農業の難しさだと実感しました。
これからの天候次第で梅の実の生育が左右され、生産者さんはまだまだ気が抜けません(雨が少ないと玉伸びせず、実が大きくならないため)。来週から梅の完熟度合いを見計らって収穫していき、5月中旬にまずは小梅の出荷が始まります。続いて青梅(白加賀は数量限定、白加賀以外の品種もあり)、6月に入ると十郎、南高の出荷と続きます。生梅のご注文はジョイファーム小田原のホームページの注文フォームのご利用が便利ですのでぜひご活用ください。
生産者:鳥居啓宣さん